雄町米と雄町の名水(2002年3月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下 附一竜

 当社から1km程度離れたところに、岡山市雄町というところがあります。 この雄町というところは、酒造米品種のルーツといわれる「雄町米」の誕生したところであり、また、岡山の名水「雄町の冷泉」のあるところとして有名なところです。 今月は酒造りと大変縁の深い「雄町米と雄町の名水」についてお話させていただきます。

 まず、「雄町米」についてですが、この米は雄町の篤農家岸本甚造(きしもとじんぞう)が、安政6年(1859)頃に伯耆大山へ参拝した帰りに見つけた2本の穂を持ち帰り、選抜を重ねて、慶応2年(1866)に育成したものといわれています。 当時は二本草と名付けられていましたが、酒米として評判が高まり、いつのまにかその土地の名をとって、雄町米と呼ばれるようになったといわれています。

 雄町米は千粒重が26g以上ある大粒種で、粒の中心部には麹が入りやすい心白が有り、酒米としてすぐれているといわれています。 ただ、雄町米は長稈種(ちょうかんしゅ)で農作業の機械化に適合しにくく、生産量は減少の一途をたどっていましたが、現在は、再び見直され作付面積が増えつつあります。

 次に「雄町の冷泉」についてですが、この井戸水は、江戸時代には備前藩池田候の御用水として、茶会などに使われていました。 深みのあるやわらかい口あたりの水で、昭和61年環境庁が全国の名水百選に指定しています。

 ところで、この雄町の名水も当社の地下水も同じ旭川の伏流水で、成分的には変わりません。 当社が現在地に工場を移転するときに、一番に水質検査をし、純良、清浄なる水質を確認しております。

 また、近いので雄町の名水を仕込水として利用させていただき、「特別本醸造・雄町の名水仕込」を限定販売しております。

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