「医食同源」について(2001年9月号)
宮下酒造株式会社
社長 宮下 附一竜
中国では、「医食同源」ということがいわれます。 これは食べることの大切さを教えるもので、「医学と食事は根本的には同じである」という食の哲学です。
このように大切な食生活を現代の日本人は軽視しているのではないか、という問題提起をされているのが「食の堕落と日本人」の著者小泉武夫先生です。
この本の中で、食の堕落の一つの例として、日本酒を忘れた日本人をとりあげておられます。 小泉先生の本から引用させていただくと、
「日本には昔からこの国で生れ、育ってきた民族の酒・日本酒がある。 米を食べ続けてきた日本人に一番よく合う酒ゆえに、長い歴史の中で、日本人の食卓に欠かすことのできない民族酒であった。 冬は燗をして体を温め、夏は冷やしてその馥郁たる香味を楽しんできたのである。 そんなすばらしい日本酒があるのに、ここ数年の間に、テレビから雑誌に至るまで、猫も杓子もビール、ワインである。」
そして、「今からでもいいから、もう一度、日本酒と日本食の素晴らしい相性に目を向けていただきたいものである。」と述べられています。
誠に私たち日本酒を醸造している者にとって、ありがたい応援の言葉であると思います。 先生の応援に答えるためにも、今後とも心を込めた酒造りに邁進していかなければならないと強く感じています。
最後にもう一度先生の言葉を引用させていただき終わりといたします。 「酒も食べ物も料理も、すべては心に始まって心に終わるのである。 したがって酒を飲むということは、酒自体を飲むだけでなく、心も飲むのである。」