クラフトジン「岡山」と「オランダおいね」(2018年3月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜

(1)クラフトジン「岡山」の誕生
 蒸留酒ジンは、1660年オランダのライデン大学の医学部教授「フランシスクス・シルヴィウス」によって作られた解熱・利尿用薬用酒「ジュニエーヴェル・ワイン」が起源と言われています。

 1688年イングランドにおいて「名誉革命」に成功したオランダ総督のオレンジ公ウィリアムは、「ウィリアム3世」としてイングランド国王に即位しましたが、その際このオランダの酒もイギリスに持ち込まれ、「ジン」と呼ばれるようになり人気を博するようになりました。1751年「ウイリアム・ホガース」の描いた銅版画「ビール通りとジン横丁」を見ると、ジンが価格の安い大衆の酒として多くの人に飲まれるようになったことがわかります。

 現在「ドライ・ジン」と呼ばれている「ロンドン・ジン」は、19世紀半ばに発明された連続式蒸留器によって作られたアルコール度数の高いスピリッツにジュニパーベリーなどの副原料を加えて単式蒸留されたものが主流だと言われています。

 クラフトジン「岡山」は、2016年9月日本で最初のクラフトジンとして岡山で誕生しました。クラフトジン「岡山」は、宮下酒造において単式蒸留された本格米焼酎に、11種類のボタニカルと岡山県産の白桃、ピオーネなどの果物を加えて、ドイツ製の銅製単式蒸留器で蒸留し、樫樽でほのかな色がつくまで熟成した岡山のクラフトジンです。複雑な香りとさわやかで、奥深い味わいをお楽しみください。

(2)オランダおいね
 「オランダおいね」こと楠本イネは、シーボルトの娘です。イネは女医を志し、1845年から六年八カ月岡山の石井宗謙のもとで産科医術を修業しています。

 シーボルトは1823年8月長崎の出島のオランダ商館医として来日し、鳴滝塾を開設して日本人に西洋医学の教育を行いました。1827年日本女性楠本滝との間に楠本イネをもうけています。1828年シーボルト事件の結果国外追放になり、1830年オランダのライデンに住むことになり、シーボルトの蒐集した日本のコレクションは日本博物館に展示されました。今日でもライデン国立民族博物館に展示されています。

 オランダのライデン大学の医学部教授によって作られたジンの流れをもつクラフトジン「岡山」と、岡山で医学の修業をした楠本イネの父であるシーボルトがライデンに日本博物館を開き、住んでいたという縁によって「オランダおいね」と「クラフトジン岡山」は繋がりました。
 
 「日本と世界の酒文化をつなぐ」ことを使命としている宮下酒造にとって、この繋がりを見つけることができたことは、大変うれしいことだとオランダに感謝しています。

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