岡山小売酒販組合総会挨拶(2012年5月号)
宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜
第59回岡山小売酒販組合通常総会、並びに第34回岡山酒販協同組合通常総会の開催大変おめでとうございます。 また、日頃より皆さまには何かとご愛顧、ご支援いただきまして誠にありがとうございます。そして、本日はこのようなご挨拶の機会を与えていただきましたことをお礼申し上げます。
何かと暗く、あまり明るいことのない世の中ですので何をお話すればよいのか迷っておりましたが、つい先日、日本酒造組合中央会が平成23年度清酒の課税移出数量を発表しまして、平成7年度以来16年ぶりに1.2%プラスになったことを発表しました。これは少し明るい話ですのでこの事をとっかかりにお話してみたいと思います。清酒の出荷がプラスになった原因は、昨年3月の東日本大震災で被災した東北の清酒に対して消費者の温かい支援があり、東北6県の出荷数量が7%増加したせいだと考えられます。ちなみに、岡山県はマイナス7%でその恩恵は受けていません。
ところで、平成7年には阪神大震災があり、灘地区の酒造家に甚大な被害をもたらし、被害総額は480億円に及ぶといわれ、灘五郷の50社のうち21社が廃業したと聞いています。平成7年の清酒の課税出荷は130万KLで平成23年度が60万KLですから、16年間で半分以下に減少しています。一方、焼酎はこの16年間で60%程度伸びていますから、確かに清酒は焼酎に喰われたと言えるでしょう。しかし、その焼酎も平成17年頃をピークに少しずつ減少を始めています。酒類全体ではこの16年間で1千万KLが9百万KLに10%減少しています。
それでは、これからの酒類業界はどのように変化していくのでしょうか。
キーワードは「生産年齢人口の減少」と「グローバリゼーション」だと思います。15歳から64歳までの「生産年齢人口」は、実は平成7年の8千7百万をピークに減少しており、平成22年には八千百万人、15年後には7千万人程度に減少する予定です。生産年齢人口の減少は、消費の減少をもたらし、供給能力が過剰になり、一層の競争の激化につながっていくと思われます。
次にモノ・カネ・ヒトの面で「グローバリゼーション」が大きく進展していることです。冷戦の終焉によって、中国、インド、ブラジル等の新興国が市場経済化し、先進国の技術・資本と新興国の豊富な労働力が結びつき国際分業が広がった影響が大きくなっていることです。日本では「失われた20年」といわれますが、デフレ脱却し、経済成長を実現することは今後とも大変困難なことだと思われます。
このように、急速な人口高齢化とグローバリゼイションの進展という大きな環境変化の中では、今後とも酒類の消費は大幅に減少を続けると思われます。
ところで、私は酒類の売上と収益の低下という酒類業界の危機的状況を乗り切ためには、自分だけよければという一人勝ちの考え方で安売り競争することは滅亡につながると思います。酒類業者として生き延びていくためには、業界として協調していくことが大切なのだという意識の共有化が求められていると思います。酒販組合や酒造組合の必要性は今後また再認識されていくものと信じています。
ありがとうございました。