酒は文化なり(2010年2月号)
宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜
酒は、大変美味で、飲むこと自体が楽しい嗜好品であるとともに、致酔性のある飲料として、過度の飲酒は健康への悪影響があり、社会とのかかわりにおいてマイナス面も取り上げられる多面性を持つアルコール飲料であるといえます。
酒の特性として、酒には酒税がかけられ国家の財政上重要な地位を占めてきました。古くは室町時代から酒の醸造、販売を認める代わりに「酒屋役」という課役を徴収するようになり、延々今日まで酒と酒造りに対していろんな形で課税が行われてきました。また、酒の原料が主食である米であるため、江戸時代よりたびたび米の欠乏による酒造規制が行われ、米の統制を通じての酒造規制は昭和49年(1974年)まで続くことになりました。
長い歴史と伝統を有する酒造業ですが、酒税という過酷な負担と米の統制による酒造規制によって、最近まで自由で、創造的な「酒の文化」を構築することができませんでした。 現在においても、まだまだ酒に対する規制緩和は不十分で、酒からいろいろな負担や規制を取り外し、酒本来の価値を探求するという「酒は文化なり」という認識は徹底されていません。むしろ、酒のおよぼす社会的なマイナス面が強調され、新たなアルコール規制が強化されようとしていることは残念なことです。
酒を覆ってきた桎梏を取り除くために、世界の酒、そして、日本の酒を歴史的観点から考察することを通じて、「酒は文化なり」ということを明らかにし、新しい酒文化あり方を提案することが必要であると考えています。