「コモディティ化の罠から脱却すべき清酒業界」(2007年9月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜

 私たち酒造業界の置かれた環境は、ますます厳しいものとなっていますが、この困難を克服し、新しい時代環境に適応するための課題を私なりに一言で表そうとするならば、「コモディティ化の罠から脱却すべき清酒業界」ということになると思います。

 コモディティ化とは、技術的水準が次第に同質的になり、製品やサービスにおける本質的部分での差別化が困難となり、どのブランドを取り上げても顧客側からするとほとんど違いを見出すことのできない状況ということです。

 コモデイテイ化した製品は、供給が過剰になり、激しい値下げ競争が起き、利益があがらないということになります。

 そこで、コモデイテイ化した市場においては、コストを引き下げて価格競争に勝つことによって活路を見出そうとする企業と新しい顧客価値を創造し、再び差別化をもたらすことによって活路を見出そうとする企業が現れることになります。もちろん、新しい顧客価値を創造し、価格競争を回避する道こそ私たちの目指すべき方向であることは論をまちません。

 問題はどのようにして「コモディティ化の罠」から脱却するかということです。それは、大変難しいことではありますが、新たな発展のために挑戦していかなくてはならないことだと思います。

 成熟化というよりも、縮小を続ける清酒市場の中において、血みどろの戦いが繰り広げられるレッド・オーシャン(赤い海)から抜け出し、価格競争のないブルー・オーシャン(青い海)を発見するために、さまざまな歴史と物語と文化を身につけている私たち酒造家の持つ 知識、情報、経験、ノウハウ、知恵といったものをもう一度洗い直し、新しい価値として顧客の皆さんに訴えていくことが求められていると思います。

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