第32回夏期酒造ゼミナール 開会挨拶(2006年9月号)
宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜
本日は第32回夏期酒造ゼミナールを大山において開催させていただきましたところ、中国5県より大勢お集まりいただき誠にありがとうございます。まずもって、ご光臨いただきましたご来賓の皆様に心よりお礼を申し上げます。
そしてまた、本年は、夏期酒造ゼミナールの原点ともいえる、ここ大山において開催させていただきましたが、ゼミの準備をしていただきました鳥取県酒造組合の皆様、運営委員の皆様、事務局の皆様に厚くお礼申し上げます。
ところで、今回で32回目をむかえる夏期ゼミですが、平成7年までは大山観光会館で開催され、私たちは大山ゼミと呼んでいました。その後各県を回ることになりましたが、今回はその大山に帰ってくることができ、青春時代、大山で勉強させていただいた私には大変懐かしい思いがします。
実は、32回というのは、日本酒造組合中央会の中国支部の経営者研修になってからで、その前10年間は、中国5県の若手の皆さんによって自主的に運営されていました。なぜこの夏期ゼミが昭和50年より中国支部主催になったかといえば、当時酒造業界において、第三次近代化促進計画がスタートしています。昭和39年度から始まった第一次、第二次近代化計画が、生産設備の規模拡大によるスケールメリットを目指したものであったことから、第三次の近代化計画においては知識集約化事業を行うことになり、人材養成事業が中央会の重要な事業になってきたことによります。
さて、私たち酒造業界の置かれた環境は、ますます厳しいものとなっていますが、この困難を克服し、新しい時代環境に適応するための課題を私なりに一言で表そうとするならば、最近読んだ二冊の経営書の題名を使って、つぎのように表現したいと思います。
「成熟化した、伸びない市場でいかに稼ぐか、そして、新しい市場を開拓してブルー・オーシャン(青い海)をいかに生みだすか」という課題であると思います。成熟化というよりも、縮小を続ける清酒市場の中において、血みどろの戦いが繰り広げられるレッド・オーシャン(赤い海)から抜け出し、ブルー・オーシャン(青い海)を創造するために、歴史と文化を誇る酒造家の持つ知識、情報、経験、ノウハウ、知恵などをもう一度洗い直して経営力にしていくことが求められていると思います。
私たちが、過去の蓄積された知識を見直し、活用し、新たに力強く前向きに進む決意を確認することができれば、長い間、先輩が築き上げてきてくれたこの夏期ゼミの意義も大きなものになると考えます。
中国5県酒造家の知識集積の原点ともいえるここ大山における今回の夏期ゼミが皆様にとって意義深いものとなりますことを祈念いたしまして、私の開会挨拶とさせていただきます。