リスクをとらないリスク(2005年9月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜

 2005年版中小企業白書(日本社会の構造変化と中小企業者の活力)のまとめには、「リスクをとるのは誰か」というタイトルがつけられおり、「リスクをとらないリスク」の危険性について次のように書いています。

 「社会全体にとっても自営業の減少や開業率の低下等を通じ、中長期的には、潜在成長力の維持や産業構造の高度化が危うくなるリスクを生じさせるものである。わが国は保守的な風土が強いと言われることもあるが、過去の幾多の危機に際して社会はリスクに果敢に挑戦し、それを乗り越えてきたことを改めて確認すべきである。」

 今日のような経営環境の変化の激しい時代においては、「リスクをとらないリスク」、すなわち、失敗を恐れて現状維持を続けることのリスクと、「失敗するリスク」、すなわち、経営革新や新分野進出などにチャレンジすることのリスクがあります。

 将来の見通しのはっきりしない、リスクの大きい経営環境の中において、経営者は、「リスクをとらないリスク」をとるのか、また、「新しいことにチャレンジすることのリスク」をとるのか、どちらのリスクをとるのかという「意思決定」にせまられています。いかなる方向に進むかを選択することが、今日問われているといえます。すなわち、競争の激しい環境のなかで「意思決定」を間違えるとすぐに負けてしまうという「勝負の時代」に突入しているのです。

 現在の日本の停滞は、「勝負の時代」において、企業が勝負をさけるようになったことにあるのではないかといわれています。借金をして、リスクを冒しながら、将来の利益を追求する存在が企業であるはずですが、失敗を恐れて消極的になっているというのです。

 しかし、このままでは負けてしまうという「危機感」が生まれてきているのも事実です。生き残るためにいかなるリスクをとるのかという「意思決定」をするという「決断力」が問われているといえると思います。

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