今なぜ「酒税制度改革」が必要なのか(2005年5月号)

宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜

  1. 酒税制度における「1940年体制」の打破と新しい理念の確立
    1. 今日の酒税制度の問題点を明らかにするため、仮説の設定を行い、仮説の検証を通じて、課題を提起していきたい。
    2. 仮説の設定: 戦時期に総力戦のために作られたものが、戦後に生き残り、現在にいたるまで重要な地位を占め続ける経済体制を「1940年体制」と名付ける。(野口悠紀雄著「1940年体制」) 現在の酒税制度の中にも、戦時経済体制である「1940年体制」すなわち酒税中心思考が生き残っており、このことが現在の酒税制度の問題点になっているのではないか。
    3. 明治以降、日本の富国強兵策の推進に貢献してきたのが「酒税」であった。日清、日露戦争、そして太平洋戦争において、戦費の調達のために「酒税」の果した役割の大きさは周知のことである。
    4. 戦時体制下において、1940年「酒税法」が制定され、明治以来の造石税から、徴税効率のよい蔵出税への切り替え、主食の米を使う清酒の生産制限と米を使わない酒である合成清酒の奨励、酒類販売業免許の創設等が実施された。また、1943年には級別差等課税制度が採用され酒税の増収が図られた。戦後の1953年「酒税法」(現行法)は改正され、密造酒対策として減税が行われた。1962年酒税法の大幅改正が行われ、従価税率制度の導入、分類差等課税制度における税率格差の拡大が行われた。このように見てくると、戦中から戦後の酒税制度は、戦時期に作られた骨格が継承されたという仮説は成り立つのではなかろうか。
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