「日本料理には日本酒を」(2004年10月号)
宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜
今回は、お酒と料理について考えてみたいと思います。
まず、各国の料理にはそれぞれ合うお酒があると思います。例えば、フランス料理にはワイン、中国料理に紹興酒、日本料理には日本酒がよく合うと思います。それは長い年月かけて料理に合う酒が出来上がっていった結果だと考えられます。ところが、今日、各国の国民酒と呼ばれてきたものが大変苦戦しています。
つぎに、お酒の役割ですが、私は、お酒は料理を引き立てる脇役がふさわしいと考えております。料理に合うお酒と一緒に料理を食べていただければ、一層おいしく食事をしていただけると思います。脇役として料理を引き立てるためのお酒の役割はとても大切なことだと考えます。ところが、こうしたお酒の役割についても、メーカーも消費者もあまり考えなくなってきているのではないかと思います。
現在の日本では、料理にお酒を合わせるという考え方、すなわち、このことが「食の文化」と呼ばれるものではないかと思うのですが、こうした考え方が混乱してきているのではないかと思います。
そのような「食の文化」の混乱の中から、このままではおかしい方向に進んでいるのではないかという疑問が投げかけられているように思います。
例えば、地方においては、「地産地消」という運動が盛んになり、郷土料理の見直しを行おうという機運が高まっています。 また、「スローフード」という運動も世界的な流れとして生まれてきています。
日本の国民酒と呼ばれる日本酒も、その酒類に占めるシェアは10%を切り大変苦戦しています。そこで、「食の文化」の混乱を解消していくために、私たち清酒業者は、「日本料理には日本酒を」という運動をおこしていくべきではないかと思っています。そこで、なぜ日本料理に日本酒が合うのかという根拠を明確にして、消費者に理解していただくことが大事になってくると思います。