「酒造業の再生」(酒造家魂の再生)について(2004年4月号)
宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜
(1)現状分析
- 2003年度焼酎の販売数量(95万KL)が清酒(86万KL)を抜いたこ とに見られるように、清酒業界は絶えず他の酒類に侵食され、守勢にまわり大変苦戦 している
- 清酒の出荷数量は1975年頃をピークに漸減し、ここ3年で約20%の激 減。成熟から衰退の道を示しているように思われる
- 2003年9月小売販売免許の規制緩和が行われ、流通チャネルに大きな変化 が起こり、一般酒販店の廃業が多くなり、新業態のチャネルに弱い地方のメーカーに 不利になっている
- 酒類業界はデフレ経済の中における規制緩和によって、本格的な地殻変動が起 こっており、特に清酒業界は「歴史的危機」の時を迎えており、対応を誤れば業界の 崩壊に通じると考えられる
- 企業の存続をはかるためには、この危機に「瞬発的な適応」をすることが求め られており、自己革新力が求められている
(2)第一次中期計画「岡山県産酒の再生戦略」の検証
- 第一次中期計画は2001年7月より2004年6月の三カ年計画であり、第 一には県産酒のPRをはかること、第二には「雄町米」を文脈情報として岡山ブランド の確立を目指すこと、第三には社員による酒造りを実現するために若手技術者の養成 に努めることを大きな柱として実施してきた
- 実施した事業は広範にわたり、これらの事業を通じて岡山県産酒に対する認識 度は高まったように評価できる
- ただ広範に事業を実施したため、焦点が拡散したきらいがある。第二次計画に おいては「選択と集中」が必要と思われる。特に、個々の企業が行う事業と組合が行 う事業の峻別が必要であり、両者の事業の相乗効果を考慮して組合の事業は計画をた てなければならない
- 第二次計画の策定に当たっては、第一次計画の延長線に策定するのでなく、新 しいアングルからのアプローチが求められる
(3)第二次計画の骨子(案)
- 基本的方針○ 現在の危機的状況を考慮し、第一次中期計画「岡山県産酒の再生戦略」より、 時代の底流を流れる本質的、構造的課題「酒造業の再生」に取り組み、衰退から再生 につながる契機を発見する
- 短期的成果を実現することの困難な現状においては、「急がば回れ」というこ とわざのとおり、業界と個別企業の進むべき海図を作成することが肝要である
- 「人」、「金」、「物」、「情報」等の経営資源のうち、リスクマネジメント システム(危機を乗り越える仕組み)として「人」に焦点をあて、「人材育成」を切 り口とすることによって第二次中期計画の骨子とする
- 「人材育成」を切り口とした具体的プログラムの作成
具体的プログラムの作成については、外部専門家に委託する- 経営者の資質向上のためのプログラム
「サバイバル研究会」――経営の多角化、財務体質の強化
成功事例の研修会(ビジネスモデルの探求) - 営業幹部の資質向上のためのプログラム
「新規販路開拓研究会」――新市場の開拓 - 醸造技術者の資質向上のためのプログラム
「商品企画研究会」――新製品の開発
- 経営者の資質向上のためのプログラム
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目標 これらのプログラム実行の成果として、次のような目標を達成する
- 「酒造業界の進むべき方向性を明示する」
自分で考える力をつけ、この危機をチャンスに転化する - 「顧客価値の提供」
顧客支持を得られる新しい価値の提供 - 「酒造家魂の再生」
この混乱期を乗り越えるために、強い精神力と知恵を可能にする「酒造家魂 の再生」を図り、業界の存続をめざす
- 「酒造業界の進むべき方向性を明示する」