文脈情報の重要性(2003年11月号)
宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜
長期的な不況の中において、低価格訴求によって販売競争に勝とうという競争戦略が浸透していますが、経営資源の乏しい我々中小企業が、大手企業と同じ土俵で体力競争することはあまり得策とは思われません。
そこで、何らかのイノベーションを遂行し、新たなる価値と市場の創造を行う必要性が生まれることになります。すなわち、価格競争よりブランドの構築が重要となります。
ブランドの構築とは、企業と顧客との間に長期的に揺るぎない精神的な絆を構築することです。 そのためには、企業は顧客の期待に応え続けるために、豊かな文脈情報(コンテクスト・Context)を築き続けなければなりません。 文脈情報とは、企業と顧客を結ぶためのコミュニケーションにおいて、企業の発するメッセージが文脈情報と一緒に伝えられると顧客に理解されやすく、新しい知識として心の中にブランド・イメージを築くことができるものであります。
今日のような変化の速い時代においては、一つの文脈情報では長くもたないので、たえず新しい情報を発信することによってブランド力を付けていかなければならないのです。
酒業界においても、低価格の発泡酒や缶チューハイなどがよく売れてはいるが、最近はプチハレ消費(ほんの少しではあるがぜいたくをしようという考え方)が生まれてきています。 とくに、季節商品とか、数量限定品であるといった文脈情報を付加した商品に関心が集まってきているようです。
これから競争優位を築くためには、顧客に対して魅力のある、豊かな文脈情報をのせた新しい提案をし続けることが我々中小企業に求められていると思われます。