デフレ下での規制緩和は過酷である(2003年9月号)
宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜
いよいよ、9月1日より酒販免許の規制緩和が実施されます。 一部緊急調整地域に指定された地域では、2年間新規の免許は下りませんが、指定割合は30%以下のようですから、酒類業界の全体としては大きく規制緩和の時を迎えたといえると思います。 一方、日本の経済は物価の低下が続くデフレ不況から脱出できていません。 まさに、「デフレ下の規制緩和」を迎えた酒類業界の現状をどのように理解していけばよいのでしょうか。
1.家計消費統計によると、酒類消費金額は2003年4万7000円余りで1994年の5万5000円から8000円も減少しています。 デフレ経済のもとで、消費者は出費を抑えていることはまちがいありません。
2.昨年の道交法の改正によって、飲酒運転の罰金が強化されました。 このことによる外食の飲食店への影響は大きなものがあり、酒類消費の減少の大きな原因になっていると思われます。
3.厚生省は、21世紀の国民の健康づくりを目指す運動「健康日本21」において、「節度ある適度な飲酒」として、一日平均純アルコールで約20グラム程度の飲酒に抑えるように勧めています。
4.このように、酒類に対する社会的規制が強化され、また、デフレ経済のもと消費の深刻な不振の中で、がむしゃらに規制緩和が必要であるという考えから、供給サイドの蛇口の量をどんどん拡大していくことは、二重、三重の意味で、既存の酒販店に苦痛を与えるものだと思います。
5.確かに「構造改革」ということで、生産性の低い弱者を切り捨てていくことが、経済全体の効率化に貢献するという考え方もありますが、あまりにも「デフレ下の規制緩和」は過酷であると思われます。
6.デフレという厳しい経済環境をもたらした責任の大半は政府にあると思います。 例えば、銀行のペイオフ制度も延期されたことを考慮すれば、ここでこのまま成り行きにまかせることはとてもできないのではないかと考えますが皆様はどのように思われますでしょうか。
7.しかし、もうすでに矢は放たれています。 これからしばらくは、酒類業界においては、大混乱期を迎えることになることが予想されます。 私は、なんとかこの危機的状況を無事くぐり抜けることができるように、ただただ祈るばかりです。