こしき倒し(2003年5月)
宮下酒造株式会社 企画研究部
今日5月15日をもってついに平成14年度の清酒製造の仕込みが終わりました。 平成14年9月30日から始まった酒造りですが、大きなトラブルなく無事終了することができたことは大変喜ばしいことです。
今年度の酒造りから本格的にスタートした「社員による酒造り」ですが、当社杜氏である中浜昭夫氏(備中杜氏)の指導のもと、 頭(かしら)の三宅民夫氏にサポートしていただき、製造社員6名(清酒製造主任1名、麹係り1名、酒母係り1名、仕込み係り1名、調整係り1名、分析係り1名)が一丸となって酒造りに取り組んだおかげで、 不慣れな点も多々ありましたが、無事に「こしき倒し※」を迎えることができました。
約8ヶ月半という非常に長い間の造りでしたが、荒走りやにごり酒から始まり、大吟醸、吟醸、純米酒、本醸造、普通酒と様々な種類のお酒を平均約2トン仕込みで60本近く仕込みました。 今から思い起こせば、造ってきた酒それぞれの思い出が思い起こされるようです。 杜氏は「造った酒は我が子のようだ」とよく言いますが、まさにそういった思いで社員たちもいるのではないでしょうか。 自分たちが思いを込めて一生懸命造った酒だから当然だと思います。
しかし、こうしてできたお酒のできも、私どもは自信をもって売り出せると自負しておりますが、お客様が判断されるものと思います。 そういった意味において、品質管理には一層の努力をしなければと身が引き締まる思いです。
これからろ過、火入れ、瓶詰めし、きちんと流通させ、お客様のところへきちんと品質が保持された状態で届けられるように細心の注意を払わなければならないと思います。 仕込みは終わりましたが、製造者にとってはこれからが勝負のときを迎えます。 今年の酒のできを的確に捉え、日頃とってきたデータを分析し、平成15年度の造りに生かすという大きな仕事が残っています。
また、新しいタイプ酒の造りの研究も一層挑戦していかなくてはならないと思います。 今年度は発泡清酒という新しい分野に挑戦し、極聖(きわみひじり)微発泡純米吟醸Happish(ハピッシュ)を発売することができました。 平成15年度も新しいものを生み出していきたいと思います。
そのためには営業社員との連携が不可欠だと考えております。 営業社員が的確に市場のニーズを捉え、その情報を製造社員に伝え、製造に生かす。まさにそれが社員による酒造りの最大のメリットとだと考えられます。 この横の繋がりを強化し、市場ニーズ適した、つまりお客様に喜んで満足していただける商品作りを目指していきたいと考えております。
最後になりましたが、伝統的な備中杜氏の技術を継承し、若い社員による感覚で日本酒に新しい息吹を吹き込めるよう頑張っていきたいと思いますので、お客様におかれましては今後ともよろしくお願い申し上げます。
※ こしき倒し:その年仕込まれる最後の掛米の蒸しが終了し、ひと冬使ったこしきを釜から取り外すこと。この日は、その年の仕込みが無事に終了したことを祝って祝宴を催す。