お酒の種類についてその2(2002年9月)

宮下酒造株式会社 企画研究部

 先月、「お酒の種類についてその1」に大まかにお話をさせていただきましたが、今月は各酒類について詳しくお話させていただきたいと思います。 先月もお話しましたとおり、醸造酒には清酒、ビール、果実酒(ワイン)があり、蒸留酒には焼酎(甲類、乙類)、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ(ウオッカ、ジン、ラムなど)があり、混成酒にはリキュール(梅酒など)、甘味果実酒、合成清酒、みりん、雑酒(発泡酒など)があります。

 清酒はご存知のとおり日本の国酒であり、主な原料として米、米麹及び水を発酵させて、こしたものです。 清酒には醸造用アルコールを使用しない純米酒と、規定量使用した吟醸酒や本醸造酒などがあります。

 ビールは麦芽、ホップ、水及び米、コーンスターチ(副原料)などを原料として発酵させたものです。 麦芽の使用量が100%であるのが、オールモルトビールと呼ばれるものです。弊社のビール「独歩」もオールモルトビールであり、ドイツの厳しいビール純粋令(1516年)*にのっとって厳正に造られています。 また、麦芽の使用量が50%を切るとビールではなく我国の酒税法では発泡酒に分類されます。

 果実酒は果実又は果実及び水を原料として発酵させたものです。 現在国内でもワインは造られていますが、店頭にならんでいるのはほとんど欧米、南米、オーストラリアなどの輸入ワインが主流のようです。ワインの他にシードル(リンゴ果実酒)などもあります。

 焼酎は使用する蒸留機の種類によって甲類と乙類に分類されます。 甲類は糖質、穀類原料などのアルコール含有物を連続蒸留機で蒸留したもので、アルコール分が36度未満でかつエキス分が2度未満のもののうち、ウイスキー、ブランデー、スピリッツに該当しないものをいいます。 乙類は穀類、芋類原料、穀類麹、黒糖などのアルコール含有物を単式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分が45度以下かつエキス分が2度未満のものうち、ウイスキー、ブランデー、スピリッツに該当しないものをいいます。これには沖縄の泡盛*も含まれます。 また、焼酎はホワイトリカーと呼ばれることもあります。

 ウイスキーは製法により3つに分けられます。発芽させた穀類と水を原料として糖化させ、発酵させたアルコール含有物を蒸留したものをモルトウイスキーといいます。発酵させた穀類と水によって穀類を糖化させ、発酵させたアルコール含有物を蒸留したものをグレーンウイスキーといいます。 モルトウイスキー又はグレーンウイスキーにアルコールなどを加えたもので、モルトウイスキー又はグレーンウイスキーの混和割合が10%以上のものをブレンデッドウイスキーといいます。

 ブランデーは果実及び水を原料として発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの、又は果実酒を蒸留したもの(ブランデー原酒)です。 また、ブランデー原酒にアルコールなどを加えたもので、原酒の混和割合が10%以上のものもいいます。

 スピリッツは糖質原料、デンプン質原料、香料植物を原料とし、焼酎、ウイスキー及びブランデー以外の蒸留酒のうち、アルコール分が45度以下でエキス分が2度未満の酒類をいいます。 アルコール分が45%を超えるものは原料用アルコールといいます。スピリッツの主なものとしてはウオッカ、ジン、ラム、テキーラなどがあります。

 ウオッカはロシア生まれで、デンプン質原料を糖化、発酵させたのち、連続蒸留機で蒸留、そのニュートラルなスピリッツを白樺炭素の層でろ過することにより、透明で雑味や異臭のまったくなく、ほのかな甘味のあるライトなスピリッツに仕上げられます。

 ジンは穀類を原料とするもので、杜松(ねず)の実を抽出して香りをつけたスピリッツです。 無色透明でさわやかな香味をもった辛口です。

 ラムはサトウキビ汁や糖蜜を原料として発酵、蒸留、熟成して造るスピリッツです。甘い香りと一種独特な風味のあるもので、西インド諸島を中心に発達しました。

 テキーラはヒガンバナ科の多肉植物である竜舌蘭(りゅうぜつらん)が原料です。 竜舌蘭を10年ほど成長させたのち、葉を切り落とすと、巨大なパイナップルのような形40-70kgの茎部が得られ、これを蒸して搾汁し、甘い汁液を採取して発酵させ、単式蒸留機で2回蒸留したのち、炭素の層を通過させて、精製し、タンクまたは樽で熟成させて造られます。

 リキュールは酒類や糖類、その他に香味料、薬用植物などの物品を原料とした酒類で、エキス分が2度以上のものです。 代表的なものとしては梅酒や缶酎ハイなどが挙げられます。

 甘味果実酒はブランデーなど、糖類、香味料、色素などを加えたものです。

 合成清酒はアルコール、焼酎又は清酒とぶどう糖などを原料として製造した酒類で、その香味、色沢その他の性状が清酒と類似するものです。

 みりんは米及び米麹に焼酎又はアルコールを加えて、こしたものです。 また、米、米麹及び焼酎又はアルコールに、みりん、糖類などを加えて、こしたものやみりんに焼酎又はアルコールを加えたものもみりんです。

 雑酒は上記以外の酒類のことをいい、今売れている発泡酒はこれに含まれています。発泡酒以外には粉末酒などがあります。

 以上、各酒類についてご説明申し上げましたが、少しでもお酒の種類についてご理解を深めていただければ幸いです。

*ビール純粋令 1516年にバイエルンの君主であったウィルヘルム4世が出した法令で、「ビールは大麦、ホップ及び水だけ使って 醸造せよ」というものであり、ドイツでは今でも厳正に守られています。

*泡盛 黒麹菌を用いた米麹及び水のみを原料として造られる焼酒乙類をいいます。

参考文献
酒販店経営通信講座テキスト<2>

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