読売新聞

2015年7月30日木曜日 読売新聞 原酒蒸溜ポット 稼働 宮下酒造 ウイスキー参入

2015年7月30日木曜日 読売新聞 原酒蒸溜ポット 稼働 宮下酒造 ウイスキー参入

 ウイスキー市場への本格参入に向け、宮下酒造(岡山市中区)は29日、原酒を蒸留する新たなポットスチル(単式蒸留釜)の稼働を始めた。炭酸で割るハイボールの流行や、NHK連続テレビ小説「マッサン」の影響でウイスキー人気が高まる中、大手がひしめく市場で「県産」がシェアを伸ばせるか注目される。

 ポットスチルは、ドイツにある蒸留設備メーカー製で、周辺設備を含めた投資額は約3000万円。1回あたり1500リットルの蒸留が可能。銅製のため、植物特有の臭いを除去し、殺菌効果もあるという。

 同社は今年、創業100周年を迎えた。記念の新規事業として、2011年にウイスキー製造に着手。焼酎用のステンレス製蒸留器(容量1000リットル)で原酒を作っていたが、商品化に備え、容量が1・5倍になる専用の設備を導入することにした。

 岡山市南区などで収穫された大麦などを原料に、29日から3日間かけて4500リットルを蒸留。アルコール度数を約60%に高め、樽1本分(約450リットル)の「モルト」原酒を作り、最低でも3年は熟成させるという。

 宮下附一竜社長は「岡山の“地ウイスキー”を定着させるとともに、マスカットやブドウなど特産品を使ったブランデーなども商品化したい」と話す。

2015年6月21日日曜日 読売新聞 酒蔵探訪@宮下酒造 蓋麹 夜通し守る

2015年6月21日日曜日 読売新聞 酒蔵探訪@宮下酒造 蓋麹 夜通し守る

酒造りは「一麹(こうじ)、二もと、三造り」と言われている。酒米のでんぷんを糖に変える麹の出来が、酒の味を左右するからだ。

 酒蔵には「室(むろ)」と呼ばれる部屋がある。最適な室温と湿度の中で、質の良い麹は生まれる。機械製造が普及しているとはいえ、今も人の手によって丹念に造られている。

 「製麹(せいぎく)」と呼ばれる製造で、最も手間のかかる「蓋麹法」を守り続ける宮下酒造(岡山市中区西川原)を訪ねた。

 蒸した米に麹菌を振りかけ、小分けして蓋(木箱)に盛っていく。小さいものから「蓋麹」「箱麹」「床麹」と製法の呼び名が異なる。蓋麹だとA3サイズほどで、同社の室には多い時で約50個積み上げられる。

 室の内部は温度と湿度が一定に保たれている。とはいえ、場所によって微妙に異なる。全ての蓋が同一条件になるよう、2~3時間ごとに蓋を上下左右入れ替えなければならない。

 「夜通し見守っていなければならないが、そうすることで麹が米粒の奥にまで浸透し、雑味がなく、香りの高い酒に仕上がる」。専務の宮下晃一(37)は説明する。手間がかかるだけに、この製法の麹は、大吟醸や純米大吟醸といった高級酒の仕込みに使用されている。

 創業は1915年。67年に玉野市から現在地の本社に蔵を移した。近くには日本名水百選の「雄町の冷泉」があり、「幻の酒米」と称される雄町米が栽培されている。それらを原料にした「極聖(きわみひじり)」などの銘柄は、やや辛口。全国新酒鑑評会では、県内最多の金賞18回を誇る。

 長年、味を支えたのが備中杜氏(とうじ)の中浜昭夫。備中杜氏組合連合会長を務め、「現代の名工」にも選ばれた。現在は若手社員が技とともに、伝統を守り続ける。薫陶を受けた製造部長の岡崎達郎(たつお)(37)も「丁寧に原料を処理することが、良い酒を造る最初の一歩」と基本姿勢を崩さない。

 夏が過ぎ、秋の到来とともに仕込みの季節となる。毎年、蔵の入り口に中浜がこしらえた神棚に手を合わせ、酒の出来を祈願することから作業は始まる。

 年を越し、大吟醸の仕込みが始まった時、作業を終える「こしき倒し」の儀式の時も、従業員は神棚の前に並ぶ。宮下は語る。「節目、節目に、良いお酒ができますようにと全員でお祈りしている。酒の神様はやっぱりいると思う」(敬称略)

2010年09月21日火曜日 読売新聞 象牙の塔から焼酎 岡大、研究用イモで醸造

象牙の塔から焼酎

 岡山大農学部は研究用に栽培したサツマイモを使って焼酎を造り、販売を始めた。宮下酒造(岡山市)と共同開発している大学ブランドの「おお岡大」シリーズで、日本酒2種と梅酒に続く第4弾。企画に携わった斉藤邦行・農学部教授は「『焼酎はないの?』という声が多かった。これからはセットで紹介したい」と意気込んでいる。

 焼酎に適した品種とされる「黄金千貫」を研究用の畑で栽培し、昨年11月に収穫。一般の米や米こうじを合わせて、4、5月に蒸留し、3か月以上熟成させた。イモと米の割合は49対51で、イモノ香りと米焼酎のまろやかさが味わえるという。

 岡山大のイチョウ並木をイメージしたラベルで、約3000本生産。このイモをテーマに卒業研究を書き上げたという同大大学院自然科学研究科1年、高越友紀さん(22)は「記念になります。飲みやすくておいしいですよ」と薦めていた。

 1本720ミリリットルで1575円。岡山大生協や岡山市内のデパートで販売されるほか、宮下酒造のホームページでも購入できる。

2009年04月04日土曜日 読売新聞 私のお気に入り 宮下酒造代表取締役 宮下附一竜 62 酒造りの視点 学ぶ 「世界の酒」坂口謹一郎著

私のお気に入り 宮下酒造代表取締役 宮下附一竜 62 酒造りの視点 学ぶ 「世界の酒」坂口謹一郎著

 大学2年生だった19歳の時、2代目だった父親が急死し、家業を継ぎました。酒造りは未知の世界。さらに、日本酒は世界各国から輸入される酒に押され、消費量が減ってきていた時代。どのように日本酒を広めていくか悩んでいる時に、書店で見て購入しました。

 発酵微生物学者の坂口さんが欧米各国の名酒の産地を訪ね、酒の歴史や現状を研究者の視点を交えながら紹介しています。印象に残るのは、「酒は環境で生きる不思議な飲み物」という一文。世界各地では、その地域に根ざした酒があります。「日本酒もその中の一つ」という、それまで持っていなかった視点を教えてくれた1冊です。

 社是(しゃぜ)の「限りない挑戦」を実践し、これまで日本酒だけでなく、特産の白桃やマスカットを使った地ビールなどを開発してきました。今後も岡山の酒造メーカーとして、この地域でしか造れない酒を開発、販売していきたいと思います。

2008年7月12日火曜日 読売新聞 丑の日にいかが?ウナギに合うビール

 丑の日にいかが?ウナギに合うビール

 宮下酒造(岡山市西川原)は土用の丑の日(24日、8月5日)に向けて、夏季限定の黒ビール「ウナギに合うビール」を発売した。焦がして芳ばしい香りの麦芽を入れた濃厚な味で、かば焼きとの相性が良いという。アルコール分5%。330ミリリットルで、希望小売価格は357円。問い合わせは同社(086・272・5594)。

2007年5月12日土曜日 読売新聞 コメ良質 初の純米吟醸 岡大ブランド酒 本醸造に加え 各3000本限定

コメ良質 初の純米吟醸 岡大ブランド酒 本醸造に加え 各3000本限定

 岡山大農学部は、同大の学生や院生が研究用に育てたコメを岡山市の醸造会社・宮下酒造に提供し、共同で岡山大ブランドの日本酒「おお岡大」を醸造、販売を始めた。昨年も造った「本醸造」に加え、今年は初めて「純米吟醸」を生産。各3000本を大学周辺や百貨店で限定販売している。

 同学部の学生らは、玉野市などにある同大の水田で、栽培研究用に毎年コメを育て、年間約50トンを収穫。昨年、このうち酒造りに適した品種「アケボノ」5トンを同社に提供し、初めて「おお岡大」を造った。「本醸造」をインターネットなどを通じて販売したところ、全国の卒業生らから注文が相次ぎ、好評だったため、今年も生産した。

 今回は「アケボノ」6.2トンを提供。日照時間が長いなど気象条件がよく、前年より良質のコメが収穫できたため、「本醸造」より格上の「純米吟醸」も造った。同社の宮下附一竜(60)は「他産地のアケボノより良質で、純米吟醸でもいける、という手応えがあった。香り高い酵母を使い、納得の出来になったと話す。

 「おお岡大」は、黒いラベルに同じ名前の同大学生歌の歌詞をあしらい、720ミリリットル瓶入り。「本醸造」は1050円、「純米吟醸」は1575円。同大の生協で売るほか、津島キャンパス周辺のスーパーなど5店と天満屋岡山店、岡山高島屋でも販売中。インターネット通販は同社HP(https://www.msb.co.jp/)で。

 神崎浩学部長は「在学生や全国の同窓生に幅広く飲んでもらいたい。大学の知名度向上にもと期待している。

2007年2月7日水曜日 読売新聞 チョコの香りの発泡酒 岡山の酒造会社 バレンタインデー当て込む 限定1万本のどごしすっきり

チョコの香りの発泡酒

 もうすぐバレンタインデー。甘いものが苦手な男性に、カカオの香りのお酒がいかが--。岡山市の酒造会社「宮下酒造」(宮下附一竜=ぶいちろう=社長)が、バレンタインデーのプレゼント用に、カカオエキスを入れた発泡酒「チョコレート独歩(どっぽ)」を開発、本格的に販売し始めた。ほとんど甘みなしにチョコレートの香りを楽しめるという。

 同社によると、主力の酒についでビールの人気が高いが、その生産量は忙しい夏に比べて1~2月は激減。何とか冬場の醸造量を増やせないかと考え、バレンタインデーに着目、一昨年秋からチョコレートを入れた酒の開発を始めた。

 当初はリキュールや焼酎を思索したが、アルコール度数が高いものにはカカオエキスが混じらない。ビールでためし、ホップと同時にカカオエキスを入れると、煮沸と発酵を経てよくなじむことが分かった。黒ビール用など3種類の麦芽を使うと、すっきりと、のごごしの良いチョコレートの発泡酒ができあがった。

 昨年約3000本を試験販売したところ、1週間で売り切れる人気商品に。今年は麦芽を7種類に増やし、コクと香りを深めた。

 宮下晃一工場長(29)は「チョコレートの香りが十分楽しめる発泡酒に仕上がった。食膳や食後、チョコレートケーキに合わせるなど、自分に合った飲み方で楽しんで」とPRしている。

 330ミリリットル入り、1本357円(税込み)。限定1万本。スーパーや百貨店、インターネットを通じて販売している。