県農業総合センター農業大学校(赤磐市東窪田)は、創立40周年を来年11月に迎えるのを控え、同校の学生が育てたコメを使って創立記念の純米酒を造っている。来年初めには完成する予定で、同校が名称を募集している。
同校は全寮制で2年間、農業や畜産業などについて学ぶ。68年に県立農業講習所と県立三徳農業研修所が廃止され、新たに設置された。今年度からは学校教育法の定める専修学校となり、卒業生には短大卒と同等の「専門士」資格が与えられ、4年制大学への編入の道も開かれるようになっている。
教諭らが、創立40周年の式典で配る記念品を考えているときに、学生が実習で栽培し年間約2トンの収穫がある食用米「ヒノヒカリ」に注目。オリジナルの酒を造ることにした。
醸造は、岡山市西川原の宮下酒造に依頼。10月中旬に収穫したコメのうち、480キロを精米して仕込んだ。来年1月中旬には、純米酒約600リットルができるという。
募集する名称は、「農大の魅力や農大らしさが感じられる名称を」と同校。最優秀賞1点を酒名に採用して賞金1万円を贈呈、優秀賞3点には賞金5千円が贈られる。
応募できるのは、県内在住か通勤・通学する人。はがきに名称(3点以内)と住所、氏名、性別、年齢、職業または学校名と学年、電話番号を記入して、〒701・222 赤磐市東窪田157、県農業総合センター農業大学校内「農大産米純米酒」名称募集係へ。締切は20日(消印有効)。
また、完成した純米酒1千本の予約注文も受け付ける。300ミリリットル入り600円、720ミリリットル入り1500円。問い合わせは同校(086・955・0550)へ。
岡山大学の農場で収穫されたコメ100%の日本酒「おお岡大」の第2弾として、「純米吟醸酒 おお岡大」ができあがり、醸造元の宮下酒造(岡山市西川原)から発売されている。720ミリリットル入り、1575円(税込)。
昨年初めて仕込まれた本醸造酒と同様、ご飯にも酒米にもなる同大学産のアケボノという品種を使用。精米歩合を本醸造の70%から、さらに米粒の中心だけを残す60%にした。吟醸酒特有の香りが出やすい酵母と味わい豊かな酵母の2種類を使い、10度前後の低温で通常より長い28日間かけて発酵させたという。ラベルは本醸造酒が銀色なのに対し、黒を採用。同大学の学生歌「おお岡大」の歌詞をあしらうスタイルは踏襲した。
純米吟醸のほか、今年も本醸造(720ミリリットル入り、1050円)を仕込んだ。ともに3千本用意し、同大学生協、大学周辺のコンビニエンスストア、岡山市内の百貨店などで販売中。宮下酒造ホームページ(https://www.msb.co.jp/)での通信販売もある。
大学って、どんな人たちが、何を勉強している場所?――。地域の人たちの、そんな素朴な興味にこたえようという動きが大学で広がっている。出店の運営、催しへの協力、新商品の開発・・・・・・。形態は様々だが、いずれも地元に深く溶け込み、「地域貢献」を志している点で共通する。大学と地域のきずなをどう強めていくか。その取り組みを追った。
今年7月、宮下酒造(岡山市西川原、宮下附一竜社長)から、岡山大学産のコメ100%の日本酒が発売された。学生歌の一節からもらった名前は「おお岡大」。ラベルには学生歌の歌詞も印刷されている。「すっきり飲みやすい味」と評判で、東京や大阪などに在住の卒業生からの注文も多いという。
岡山大農学部付属山陽圏フィールド科学センターには、岡山市津島桑の木町のキャンパス内と、玉野市八浜町大崎の農場に計約10ヘクタールの水田がある。キャンパスの水田では毎年、農学部1年生が田植えの実習をし、2年生の一部は助走や稲刈りを体験する。収穫されたコメは「岡大ライス」として、キャンパス内の販売所で市民に売るほか、大学生協の食堂で提供される。
「コメがあるなら、学会などの会食の際に食堂で提供する地酒が造れるのでは」――。大学生協の理事に昨年就任した、フィールド科学センター担当の斉藤邦行教授(作物学)は、こんなアイデアを温めていた。毎年収穫されるコメ約45トンのうち、約半分は岡山以外であまり栽培されていないアケボノという品種。粒が大きく、日本酒用にも向いている。発酵が専門の神崎浩教授(応用微生物学)がこの話を聞き、「岡山大の存在感をアピールできる品になるかも」と、県酒造組合連合会を通して今年1月、宮下酒造に打診した。
宮下酒造では、岡山大のコメで仕込むのは初めてだったため、酒造りに向いているかどうかがわからないので、純米酒や吟醸酒ではなく、本醸造酒として仕込んだ。味や香りをよくしようと、コメの重さが元の70%になるまで精米した。仕込みを担当した社長の長男の宮下晃一工場長(29)は「酵母の種類を変え、香りは控えめで味がまろやかな酒を目指した」という。
酒の名前は、宮下酒造と両教授らが相談して「おお岡大」に。ラベルは宮下酒造で考えた複数の案を、神崎教授の講義を受ける学生を対象にアンケートして決めた。720ミリリットル入り1050円(税込み)で、計3千本を販売した。大学周辺のコンビニやしないの百貨店で販売しているほか、大学生協食堂でメニューに取り入れている。手ごろな値段なので、学生が帰省するときなどの手みやげとして人気という。
斉藤教授のもとで稲作を研究している大学院生の大江和泉さん(26)は「研究室を訪れる卒業生らと一緒に飲むことも。フルーティーでおいしいですよ」。
評判を受け、宮下酒造では2シーズン目に、本醸造酒のほかに、より高級な純米酒も仕込、セットで販売することを計画している。
宮下酒造(岡山市西川原)は、県内の酒店などで13日から、玉野市産の紫いも「番田いも」を原料に使った発泡酒「スウィートポテト独歩」=写真=の販売を始めた。「独歩シリーズはこれまでピーチ、マスカットなどが発売されており、今回で10種類目。
主原料の麦芽90%に対し、副原料として紫いもの粉末を10%ほど加えたという。発酵段階で色落ちするため、紫いものソースを添加することで、鮮やかな紫色を実現した。いもが持つまろやかさとさわやかな酸味が特徴だという。価格は1本(330ミリリットル)が390円。今後は都内の百貨店などでも販売し、初年度は3万本の売り上げを目指す。
同市田井2丁目の「みどりの館みやま」で試飲した市内の主婦(64)は「口当たりがすっきりしており、すーっとのどを通る。色もきれいでお客様に出しても喜ばれそうです。」と話した。