「市政提要」にみる酒造之事
宮下酒造株式会社
社長 宮下附一竜
「市政提要」は、寛文年間(一六六一~一六七二)から万延年間(一八六〇~一八六一)に至る約二百年間の、岡山城下町の商工業や町人の風俗・生活の統制に関する法令、町人から総年寄・町奉行へ差出した諸願書や諸記録を集録したもので、岡山藩の民衆の生業や生活の実態を知るうえでの根本史料です。
この「市政提要」が編纂されたのは、一八五三(嘉永六)年のころとおもわれますが、この厖大な「市政提要」の編纂を企画したのは、ときの町奉行高桑忠右衛門です。高桑忠右衛門は、町会所に所蔵された文書・記録が雑然と集積され、分類・整理なされていないことを憂え、多くの文書・記録を項目別に分類し、年次を追ってまとめた「市政提要」を編纂することにしたのです。三十六項目に分類された中に「酒造之事」として、一六六七(寛文七)年より一八六四(嘉永七)年までの約二百年の、主に酒造統制についての記録が書かれています。