日本酒雑学語典

▼ お酒の洒落言葉
お酒にまつわる洒落言葉も多くあり、昔から人々はそうして飲む機会を楽しんでいたのです。

「きす」
酒類一般。方言の変化したもの。

「おにぎす」
焼酎・梅酒。鬼のように強いという意味。

「にがぎす」
ビール。苦味があるから

「ジューリ」
濁り酒のこと。濁りだから、ニゴリ(二五里)としゃれ、二X五の「十里」としたもの。焼芋の「栗よりうまい十三里半」と同じ洒落言葉

「すい」
清酒のこと。

「とり」
酒類一般。酒の字の酉から出た。

「ひだり」
酒類一般。左ききから出ている。

「みずどり」
酒類一般。水酉である。

「もんつき」
酒菰。紋付から出ている。

▼ 飲酒、酔いの洒落言葉

「うれる」
酔ったさま。熟れるから。

「きすすい」
飲酒のこと。「きす」を吸うから飲酒。

「きすひく」
同上。

「きすけずる」
同上。

「きすむかい」
同上。

「きすぐれ」
酩酊すること。

「きすにうれる」
同上。

「きすもつれ」
泥酔すること。

「くだをまく」
酩酊すること。くどいから。

「しびれ」
酔態。しびれから出た。

「とら」
酒飲みのこと。酒の別名「ササ」に虎。または、寅の刻(午前4時)まで飲むから。

「ばいいち」
飲酒。一杯の反対から。

「はしご」
2、3軒と飲み歩くこと。はしごは一段づつきちんと上るように、酒好きは一軒づつマメに回ることから。

「左利き」
ノンベエの意味。大工がノミを左手で持つことにかけて。

「フラトーゼ」
お酒のこと。飲むとフラフラと陽気になるから。

「まんどりあし」
泥酔を表した言葉。千鳥足に輪をかけて万鳥足。

「むねはらい」
飲酒のこと。胸のもやもやを払うといった意味から。

▼ お酒に関する言葉集
日本酒の本を読んでいると、いかにも日本酒らしい表現に出会うことがあります。いかにも通が使いそうな、そんな言葉の一部をご紹介します。

「秋あがり」
四~五月頃に火入れをし、貯蔵したお酒が秋になって熟成し、香味が整い味も丸くなって酒質がよくなってくることを「秋あがり」といいます。また、「秋晴れする」ともいいます。

「男酒」
硬質の水から造られる、すっきりとした辛口のお酒をそう呼びます。

「女酒」
軟質の水から造られる、ふっくらとしたお酒のことをいいます。

「角うち」
升酒を飲むこと。升は角から飲むことから、そういいます。

「寒造り」
寒の入りから立春までに造られた日本酒をそう呼びます。

「下り酒」
京が都の頃、関西から江戸へ運ばれてきたお酒のこと。

「献杯」
目下から目上へ盃をささげること。「お流れ頂戴」は、その逆をいいます。

「小半ら」(こなから)
半らは一升の半分(五合)。小半らはその半分で二合五酌。江戸っ子や粋でいなせな人たちは、「こなからで丁度よい」などと使っていたそうです。

「肴」(さかな)
酒の菜から、酒の添え物としてのツマミをいうようになりました。

「酒粕」
日本酒を絞った後の粕。酒の搾りかすには、タンパク質やビタミン類が含まれ、甘酒、粕汁、粕漬けなどに広く利用されています。酒の花、板おみきなどの呼び名もあります。

「上戸・下戸」(じょうご・げこ)
秦の始皇帝が、万里の長城の門を守る兵士にはお酒を、平地の門を守る兵士には甘い酒を支給したことから、酒を飲める人を上戸、飲めない人を下戸というようになりました。

「杉玉」
杉の葉を束ねて丸く刈った門飾りで、造り酒屋の軒下につり下げて、新酒ができたことを知らせます。酒林(さかばやし)ともいいます。

「角樽」(つのだる)
婚礼用の酒升で、朱塗りのものは嫁取りに、黒塗りは婿入りの時に使われました。語呂合わせから一升(一生)入り、商家では半升(繁盛)入りが用いられました。

「呑口」(のみくち)
樽や酒の容器の下に酒の出し入れのための穴があいています。この穴を呑み穴といい、これをふさぐ栓のことを「呑口」といいます。

「可杯」(べくはい)
そこに穴が開いていたり、底が平らではない変わり猪口で、飲み干さないとおけません。

「升」
もともとは計量用の升が、お酒を飲む器となりました。杉、桧などで作られます。

「日本酒読本」 日本酒造組合中央会発行 より